セイコーマートはなぜ茨城にある?北海道との意外な関係を調査!
「セイコーマートは北海道にしかない、道民だけのコンビニ」。そう思っている方は少なくありません。実際、北海道内の店舗数は1,000店を超え、道内シェアでは全国チェーンを上回るほどの存在感を持っています。旅行で北海道を訪れた人が、行く先々でセイコーマートの看板を目にして「北海道といえばセコマ」という印象を持ち帰ることも珍しくありません。
ところが、本州にも98店舗のセイコーマートが存在します。その9割以上を占めるのが茨城県で、埼玉県にもわずかながら店舗があります。北海道と縁がなさそうな関東の内陸県に、なぜ道産子御用達のコンビニが根を張っているのでしょうか。
この記事では、酒販店から始まった歴史的な経緯と、北海道と茨城を結ぶフェリー航路という2つの視点から、「セイコーマート茨城 なぜ」という疑問を一つずつ解き明かしていきます。単なる豆知識としてではなく、北海道と本州がどうつながっているのかという、暮らしの背景まで含めて見ていきましょう。
- セイコーマートが本州で唯一、茨城県に集中して出店している歴史的な経緯
- 苫小牧と大洗を結ぶフェリー航路が果たしている物流面での役割
- 埼玉県にも店舗がある理由と、茨城県との規模の違い
- 今後の出店計画と、北海道と茨城をつなぐ暮らしの接点
なぜセイコーマートは本州で茨城県に集中しているのか
ここではまず、セイコーマートが「北海道限定」だと思われがちな理由と、実際の店舗展開の数字を確認します。そのうえで、茨城県に根づいた歴史的な経緯と、それを支えるフェリー航路について、順番に見ていきます。数字と歴史の両方をそろえることで、「なぜ茨城なのか」という疑問に無理のない形で答えが見えてきます。
「北海道限定」というイメージはどこから来たのか
セイコーマートが「北海道にしかないコンビニ」と語られるのは、決して的外れではありません。1971年に札幌市で1号店を開いて以来、店舗網の9割以上を北海道内に置き続けてきたチェーンだからです。
道内では、顧客満足度調査のコンビニ部門で全国チェーンを抑えて首位を重ねるほどの支持を集めています。自社工場で作るオリジナルの弁当や惣菜、乳製品などが観光客の間でも話題になり、旅行メディアやテレビ番組で「道民のソウルコンビニ」として紹介される機会も多くあります。この積み重ねが、強いイメージを作り上げてきました。
コンビニでありながらスーパーに近い品揃えを持ち、酒類の取り扱いにも強いという特徴は、地方の生活を支えるインフラとしての役割を強く印象づけてきました。都市部だけでなく、他のチェーンが出店をためらうような小さな町にも店舗を構えてきた歴史があり、これも「北海道のどこにでもある」という感覚につながっています。
この信頼は、平時の買い物のしやすさだけで築かれたものではありません。2018年の北海道胆振東部地震では、道内全域が停電するいわゆるブラックアウトが発生しましたが、多くの店舗で従業員が自らの判断で出勤し、営業を続けたことが自動車関連メディアなどで報じられました。電源車や独自の設備を備えていたことに加え、現場の判断で店を開け続けた姿勢が、道民の間での信頼をさらに厚くしたとされています。
ただし、この印象を正確に言い直すなら「北海道にしかない」ではなく「北海道が圧倒的に多い」というのが実態です。セコマ公式の沿革ページを見ても、本州展開は決して大々的に語られてはいませんが、確かに歴史の一部として続いています。半分正しいイメージの裏側に、本州へのわずかな、しかし確かな展開が隠れているのです。
本州にも98店舗ある茨城と埼玉の内訳
2024年8月末時点の集計によると、セイコーマートの店舗数は北海道1,093店、茨城県89店、埼玉県9店の合計1,191店とされています。本州分だけを見ても98店舗にのぼり、決して無視できる規模ではありません。
| 地域 | 店舗数(2024年8月末時点) | 位置づけ |
|---|---|---|
| 北海道 | 1,093店 | 創業の地、全店舗の9割超 |
| 茨城県 | 89店 | 本州唯一の集中展開エリア、目標120店 |
| 埼玉県 | 9店 | 茨城県から広がった小規模エリア |
| 本州合計 | 98店 | 北海道以外はこの2県のみ |
注目したいのは、本州のうち茨城県と埼玉県以外には一切出店していないという点です。過去には他の地域に店舗があった時期もあったとされていますが、現在は撤退し、この2県に絞って運営が続けられています。全国展開を狙う大手チェーンとは明らかに異なる、独自の出店哲学がここに表れています。
店舗数だけを比べると茨城県は北海道の1割にも満たない規模ですが、それでも90店近くを一つの県に集中させているチェーンは多くありません。中途半端に広く薄く展開するのではなく、限られたエリアに絞って深く根を張るというやり方は、北海道での成功パターンをそのまま本州に持ち込んだ結果とも読み取れます。埼玉県の9店舗も含めれば、本州でのセイコーマートは「茨城を中心にした関東の一角」という、地図に描くとかなり偏った分布を見せています。
きっかけは酒販店のコンビニ化ノウハウだった
茨城県にセイコーマートが広がった発端は、単純な多店舗展開の延長ではありません。セイコーマート自体が、もともと取引先の酒屋をコンビニへと転換させていった酒問屋を母体に持つチェーンです。酒販店をコンビニ化するというビジネスモデルの先駆けとしての実績とノウハウを、茨城県の酒類卸事業者が高く評価しました。
その事業者がセイコーマートに協力を仰ぎ、エリアフランチャイジーという形で茨城県内に店舗を立ち上げていったのが始まりとされています。北海道と茨城という地理的に離れた土地が結びついた背景には、業種としての親和性、いわば「酒屋をコンビニに変える技術」を求める側と提供できる側が、たまたま出会ったという経緯があったわけです。エリアフランチャイジーとは、特定の地域内での店舗展開を丸ごと任せる契約形態のことで、本部が一店舗ずつ直接出店するよりも、地域の事情に詳しい現地企業に運営を委ねやすいという利点があります。茨城県の酒類卸事業者にとっても、すでに酒販店とのつながりを持っていたことが、スムーズな店舗転換につながったようです。
この成り立ちは、全国チェーンの多くが自社主導で出店計画を立てて進出していくのとは対照的です。セイコーマート側から茨城県に手を伸ばしたというより、茨城県側の要請に応える形で関係が始まった点に、本州展開のいきさつが凝縮されています。酒屋という地域に根ざした商売をコンビニに変えるという発想そのものが、セイコーマートの原点でもあります。1971年の1号店も、もとをたどれば酒販店の業態転換から生まれたとされ、茨城県での展開はその創業の物語をもう一度なぞるような形で始まったとも言い換えられます。
ここがポイント
茨城県への進出は、セイコーマートが自ら選んだ市場拡大策というより、地元の酒類卸事業者からの要請に応える形で始まりました。ノウハウを求められて応じた結果が、今の店舗網につながっています。
苫小牧と大洗を結ぶフェリー航路が支える物流
歴史的な経緯だけでは、離れた土地での店舗運営を長く続けることはできません。もうひとつの鍵になっているのが、北海道苫小牧港と茨城県大洗港を結ぶフェリー航路です。
商船三井さんふらわあの公式情報によると、この航路では夕方便・深夜便が毎日運航され、旅客だけでなく貨物輸送も担っています。片道はおおむね18〜19時間ほどで、夜のうちに乗船すれば翌日の午後には本州側の港に着く計算になります。北海道内の自社工場や農場で作られた商品を、フェリーで直接本州へ運べる体制が整っているのです。関連する苫小牧のフェリー航路を調べてみると、この港が本州との窓口として日常的に機能していることがよく分かります。
飛行機であれば北海道と関東を1〜2時間で移動できますが、大型トラックをそのまま積み込めるわけではありません。フェリーという選択肢があることで、北海道側の工場でまとめて作った商品を、積み替えの手間をかけずに本州の店舗まで届けられます。時間だけで見れば決して速い移動手段ではありませんが、物流としての「近さ」という意味では、この航路が北海道と茨城の距離を実質的に縮めているといえます。
大洗から苫小牧までは片道で半日以上かかる長距離航路ですが、トラックをそのまま載せて運べるフェリーは、陸路と海路を組み合わせた輸送に比べて積み替えの手間が少なく、鮮度が求められる弁当や惣菜を運ぶうえでも扱いやすい手段とされています。北海道側の工場でその日のうちに作られた商品が、翌日以降に茨城の店頭に並ぶという流れが、日常的に繰り返されているわけです。
もし北海道と茨城の間に安定した航路がなければ、商品を鮮度よく安定した価格で届けることは難しくなります。フェリーという物流インフラの存在が、遠く離れた茨城での出店を支える土台になっていると見ることができます。歴史的な経緯とインフラの両方がそろって、はじめて長期の店舗運営が成り立つのです。
なぜ埼玉ではなく茨城が中心になったのか
茨城県が89店舗であるのに対し、埼玉県は9店舗にとどまります。この差は、出店の起点がどこにあったかをそのまま映しています。もともとのフランチャイズ展開が茨城県の酒類卸事業者から始まったため、店舗網もまず茨城県内で広がりました。
埼玉県の店舗は、その茨城県での展開が軌道に乗ったあとに、隣接するエリアへ派生的に広がったものとされています。大洗港からのアクセスという点でも、茨城県のほうが物流上の起点に近く、埼玉県はやや外側に位置づけられます。港から近いエリアで基盤を固め、そこから徐々に周辺県へ足を延ばすという広がり方は、北海道内で店舗網を築いてきた歴史とも重なります。
もう一つ見逃せないのが、茨城県内での「面」としての密度です。89店舗という数は、単発的に点在する出店ではなく、日常の買い物圏として機能する密度に近づいています。一方で埼玉県の9店舗は、まだ生活インフラと呼べるほどの広がりには至っていません。同じ関東でも、両県におけるセイコーマートの位置づけは大きく異なります。仮に埼玉県で先に酒類卸事業者との縁が生まれていたら、中心地は逆になっていた可能性も十分にあります。どちらの県が中心になるかは、最初にどこで信頼できる提携先と出会えたかという、ある種の巡り合わせに左右された部分も大きいようです。
茨城と埼玉のちがい
茨城県は歴史的な起点かつフェリー航路の受け口という二重の理由を持つのに対し、埼玉県はそこから広がった延長線上のエリアです。同じ関東でも、セイコーマートにとっての位置づけは異なります。
本社は今も北海道にあるという軸のぶれなさ
茨城県で90店舗近くを構えるまでになっても、セイコーマートの本社機能は今も北海道に置かれたままです。全国区の大手チェーンのように、店舗数の多い地域へ経営の重心を移すという動きは見られません。
この点は、単なる企業の所在地の話にとどまりません。セイコーマートというブランドの軸足が、あくまで北海道にあり続けていることの表れだからです。茨城県の店舗網は、本州における「出張所」のような位置づけであり、北海道のコンビニが北海道のコンビニのまま茨城に根を張っている、という関係性がここから読み取れます。
本社機能や商品開発の拠点を動かさずに、遠く離れたエリアで安定した店舗運営を続けるのは簡単なことではありません。それでも半世紀近くにわたって茨城県での展開が続いてきた背景には、北海道側の生産体制とフェリー物流、そして現地に根ざしたフランチャイズの3つが、無理のない形で組み合わさってきたことがあるといえるでしょう。本社が北海道にあり続けるということは、意思決定の基準や商品開発の発想が、常に北海道の暮らしを起点に組み立てられているということでもあります。茨城県の店舗が北海道の店舗と近い雰囲気を持つのは、この軸のぶれなさによるところが大きいのかもしれません。
茨城のセイコーマートは北海道と何が違うのか
ここからは視点を変えて、茨城県の店舗が北海道とどこまで同じ仕組みを共有しているのか、そして今後どう変わっていくのかを見ていきます。歴史とインフラだけでなく、経営方針や日々の暮らしとの接点まで含めて確認することで、茨城のセイコーマートが北海道の「延長」なのか、それとも独自の存在なのかが見えてきます。
オリジナル商品や価格の仕組みは道内と共通
セイコーマートの強みのひとつは、自社工場や農場で商品を生産し、そのまま店舗に流通させる仕組みにあります。この仕組みは茨城県の店舗でも基本的に共通しており、道内と同じ弁当や惣菜、乳製品などを扱う店舗が多く見られます。店内で調理した惣菜や弁当を提供する「ホットシェフ」と呼ばれるコーナーも、茨城県の店舗で広く導入されているとされています。
スーパーのような品揃えと価格設定を兼ね備えているという特徴も、茨城県の店舗で引き継がれています。地域限定商品には違いがあるものの、「安さと自社製品で勝負する」という基本方針は北海道と変わりません。この一貫性が、遠く離れた土地でも同じブランドとして受け入れられている理由のひとつといえます。
先に触れた災害時の営業継続のように、いざというときに店を開け続ける姿勢も含めて、セイコーマートというブランドが持つ価値観は、北海道と茨城で大きくは変わっていないようです。品揃えや価格だけでなく、こうした企業文化までもが海を越えて共有されている点は見逃せません。茨城県の店舗で買い物をした人が「北海道のコンビニっぽい」と感じるとすれば、それは単なる雰囲気の話ではなく、商品開発から店舗運営の考え方まで、根っこの部分が北海道とつながっているからだといえそうです。
北海道内では、根釧地区をはじめとする酪農地帯の生乳を使った乳製品や、道産小麦を使ったパンなど、産地を生かした商品開発が広く知られています。茨城県の店舗でこうした北海道由来の商品がそのまま並ぶことは、遠く離れた土地にいながら北海道の食を身近に感じられる機会にもなっています。逆に、茨城県で人気の商品が北海道の店舗に紹介される流れが今後生まれれば、双方向の商品交流という新しい形につながっていく可能性もあります。
「茨城県民のコンビニになりたい」赤尾社長が語る狙い
食品新聞の報道によれば、セコマグループの赤尾洋昭社長は、地元の産品を使った商品開発などを通じて「茨城県民のコンビニにもなりたい」という方針を示しています。単に北海道の店舗を茨城に増やすだけでなく、その土地に根ざした存在を目指す姿勢がうかがえます。
社長の発言から見えること
「茨城県民のコンビニになりたい」という言葉には、北海道ブランドを押し出すだけでなく、地域密着型の店づくりを続けていく意図が込められています。出店エリアを広げる以上に、その土地での存在感を深めることに重きを置いているようです。北海道で長年かけて築いてきた「地域の生活に溶け込むコンビニ」というポジションを、茨城県でも同じように時間をかけて作っていこうとする姿勢がうかがえます。
同社は上場しておらず、株価上昇や配当を主要な目的にしていない企業です。短期的な収益拡大より、従業員や取引先、地域との関係を大切にする方針が、茨城県での展開にもそのまま表れていると見ることができます。地元の産品を使った商品開発に力を入れているという点も、単なる北海道ブランドの持ち込みではなく、茨城という土地そのものに向き合おうとする姿勢の表れといえそうです。北海道側で培った「地域の食材を自社商品に落とし込む」というノウハウを、今度は茨城の食材に応用しているとすれば、それは本州展開を単なる出店数の拡大で終わらせない工夫のひとつといえるでしょう。
加盟店比率2割・直営中心という独自の出店戦略
一般的なコンビニチェーンでは、加盟店(フランチャイズ店)が店舗網の大部分を占めることが多いのですが、セイコーマートは加盟店比率が2割程度にとどまり、残り8割ほどが子会社による直営店とされています。
直営中心の体制は、出店ペースの調整や品質・価格の統一をしやすくする一方、急速な多店舗展開には向きません。茨城県での着実な増店ペースは、この出店戦略そのものの表れです。加盟店を積極的に募って一気に規模を拡大するのではなく、直営を軸に時間をかけて信頼を積み上げていくやり方が選ばれているようです。
この戦略は、遠隔地での店舗運営という難しさとも関係しているとみられます。本部から目の届きにくい本州のエリアだからこそ、加盟店任せにせず直営で品質を管理する比重を高めているという見方もできます。北海道で培った運営ノウハウを、そのままの形で茨城県に持ち込みやすくする仕組みともいえるでしょう。もっとも、一般的なコンビニ経営では加盟店からのロイヤリティ収入が収益の柱になることが多く、直営中心の体制は本部側の負担が大きくなりやすい面もあります。それでもこの体制を茨城県でも維持しているという事実は、品質や店づくりの一貫性を、収益効率よりも優先していることの表れといえそうです。
全国チェーンとは異なる出店哲学のちがい
大手の全国チェーンは、基本的に都道府県をまたいで切れ目なく店舗網を広げ、日本全国どこでも同じように利用できることを強みにしています。これに対してセイコーマートは、北海道という本拠地と、そこから海を越えた茨城県・埼玉県という2つのエリアだけに出店を絞り込んでいます。地図の上で見れば、店舗網は連続していない、いわば「飛び地型」の展開です。
この違いは、単なる規模の差ではありません。全国チェーンが「どこでも均一なブランド体験」を目指すのに対し、セイコーマートは「限られたエリアで濃い信頼関係を築く」ことを優先しているように見えます。茨城県で90店舗近くまで店舗を増やしながら、それ以外の県には広げないという判断は、薄く広く展開するより、狭く深く根づくことを選んだ結果とみられます。
飛び地であるにもかかわらず経営が成り立っているのは、ここまで見てきた酒販由来のノウハウとフェリー物流という2つの土台があるからです。全国チェーンには真似しにくい、地理的な制約を逆手に取った出店の形だといえるでしょう。効率だけを考えれば、店舗網が途切れる遠隔地への出店は避けたいところですが、歴史的な縁とインフラという裏付けがあるからこそ、この一見不利に見える展開が半世紀近く続いてきたのだといえます。
120店舗を目指す拡大計画と年間ペース
茨城県における今後の目標として、120店舗という数字が挙げられています。2024年8月末時点の89店舗から見ると、まだ30店舗以上の余地があり、年間3〜4店舗ほどのペースで着実に増やしていく方針が示されています。
この数字だけを見ると控えめにも思えますが、直営中心で丁寧に店舗を増やしてきた経緯を踏まえると、急拡大よりも持続可能な出店を優先していると読み取れます。苫小牧港の物流規模を見ても分かるとおり、北海道側の輸送体制には余力があり、茨城県での出店拡大を支える基盤はすでに整っているといえそうです。
近年の業務拡大は、店舗網そのものを広げることよりも、自社ブランド商品を外部の小売店に卸す事業に重心が移りつつあるとも報じられています。茨城県内での出店はあくまで着実なペースを保ちながら、収益の柱としては卸売事業を伸ばしていくという、二段構えの戦略がうかがえます。店舗数の増加だけを追い求めるのではなく、すでに築いた店舗網とブランド力を、卸売という別の形でも生かしていく発想です。これは、直営中心で丁寧に店を育ててきたセイコーマートらしい、無理のない拡大の仕方だといえるでしょう。
フェリーでつながる北海道と茨城の暮らし
北海道の道民にとって、セイコーマートは単なるコンビニではなく、弁当や惣菜、日用品を安く安定して手に入れられる生活インフラのような存在です。この「暮らしを支える」という役割は、茨城県の店舗でも大きくは変わりません。
興味深いのは、道内で日常的に目にする商品棚が、フェリーで一晩かけて茨城県まで運ばれているという事実です。観光で北海道を訪れる感覚とは違い、茨城県民にとってのセイコーマートは、北海道と地続きの生活圏の一部になりつつあります。ちなみに、北海道側でもミニストップが北海道にない理由のように、コンビニチェーンの分布には地域ごとの事情が色濃く反映されており、セイコーマートの茨城展開はその逆方向の事例として捉えることができます。
北海道と茨城という遠く離れた2つの地域が、フェリーという一本の航路でゆるやかにつながっている。セイコーマートの茨城展開は、単なる企業のエリア拡大というより、そうした地理的なつながりが暮らしの中に形として表れた例だといえそうです。北海道旅行のおみやげ売り場でセイコーマートのオリジナル商品を見かけた人が、帰り道に立ち寄った茨城県の店舗で同じ商品に再会する、といったことも起こり得ます。旅行と日常が思いがけずつながる瞬間も、この2県だからこそ味わえる体験のひとつです。
セイコーマート茨城に関するよくある質問(FAQ)
Q1. セイコーマートは茨城県以外の本州にも店舗がありますか?
A. 茨城県のほかに埼玉県にも店舗があります。2024年8月末時点で埼玉県内は9店舗、茨城県は89店舗とされ、本州で出店しているのはこの2県のみです。かつては他のエリアに店舗があった時期もあったとされていますが、現在はこの2県に絞って運営されています。全国的に広く展開する大手チェーンとは異なる、限定的な出店方針が続いており、この2県以外への新規進出は今のところ予定されていないとみられます。
Q2. なぜ埼玉県ではなく茨城県が中心なのですか?
A. 茨城県側の酒類卸事業者が最初にフランチャイズ展開を始めた経緯があり、そこから店舗網が広がりました。埼玉県の店舗は、その延長で後から広がったエリアという位置づけにあるため、店舗数にも大きな差が生まれています。大洗港からの距離が近いことも、茨城県が中心になった一因とみられます。物流の起点に近いエリアほど店舗を維持しやすいという事情が、そのまま店舗数の差になって表れているといえるでしょう。
Q3. 茨城のセイコーマートで北海道と同じ商品は買えますか?
A. 自社工場で作るオリジナル弁当やパン、乳製品など、北海道と共通する商品を扱う店舗が多くあります。店内で調理する「ホットシェフ」のような設備も導入されているとされています。ただし地域限定商品も存在するため、店舗によって品揃えには多少の違いがあります。茨城の食材を使った商品開発も進められているとされ、北海道の味と地元の味の両方を楽しめる点も特徴のひとつです。
Q4. セイコーマートは今後も茨城県で店舗を増やしますか?
A. 120店舗を目標に、年間3〜4店舗ほどのペースで着実に増やす方針が示されています。急速な拡大よりも、直営中心で地域に根ざした展開を優先しているとされています。あわせて自社ブランド商品の卸売事業も強化されているようで、店舗数の拡大と卸売事業の強化を両輪で進めていく方針がうかがえます。
Q5. なぜフェリー航路が関係しているのですか?
A. 苫小牧港と大洗港を結ぶ航路が、北海道と茨城の間で商品を行き来させる物流の土台になっているためです。トラックごと積み込めるフェリーは積み替えの手間が少なく、この航路の存在が遠く離れた茨城での店舗運営を長く支えているという見方があります。片道18〜19時間ほどの航路ですが、夕方便・深夜便が毎日運航されているため、定期的な輸送のリズムを作りやすいという利点もあるようです。
セイコーマートが茨城にある本当の理由
セイコーマートが茨城県に集中して出店している理由は、ひとつの偶然ではなく、複数の条件が重なった結果でした。酒販店をコンビニに変えるノウハウを求めた茨城県の事業者との出会いが出発点となり、苫小牧と大洗を結ぶフェリー航路という物流の土台が、その関係を半世紀近くにわたって支え続けてきたのです。
「セイコーマートは北海道限定」というイメージは、決して間違いではありません。ただ、そのイメージの外側に、酒販業由来の歴史とフェリー物流という2つの理由でつながった茨城県という土地があります。本社を動かさず、加盟店任せにもせず、直営中心で少しずつ店舗を増やしてきたこの半世紀近くの歩みは、派手な全国展開とは違う、もうひとつのコンビニの広がり方を教えてくれます。
次に茨城県でセイコーマートを見かけたときは、北海道と茨城を結ぶ航路の存在を思い出してみると、いつもの店舗が少しちがって見えるかもしれません。そしてもし北海道を訪れる機会があれば、茨城の店舗で見た商品が、実はこのフェリー航路を通って届けられているのだと考えながら、道内のセイコーマートをのぞいてみるのも面白いはずです。

