新千歳空港のラーメンは、東京では食べられない」という声を、旅の前後に一度は目にした方が多いはずです。北海道は雄大な自然の土地というイメージが半分は正しく、その延長で、ご当地の味は現地でしか出会えないと感じるのはとても自然なことです。

ところが調べていくと、「東京にない」の正体は、有名店が一軒も進出していないという意味ではありません。えびそば一幻のように、東京駅や新宿にも店を構えるブランドは実際に存在します。

本当の落差は、別のところにあります。この記事では、空港3階の「北海道ラーメン道場」を入り口にして、なぜ北海道のラーメンが地域ごとに分かれ、それがひとつの通路に集まったのかまで、私の物差しで静かに種明かししていきます。

この記事で分かることを、先に4つだけ挙げておきます。

  • 新千歳空港「北海道ラーメン道場」に並ぶ全10店の顔ぶれと、その地域のちがい
  • 「東京にない」が個店の有無ではなく、見本市という構造を指している理由
  • 札幌の味噌・旭川の醤油・函館の塩が地域で分かれた歴史の種明かし
  • 行列を避けて短い時間で食べ比べるための時間帯と価格の目安

それでは、空港の3階から順にたどっていきます。

「東京にない」と言われる新千歳空港ラーメンの正体

まず押さえたいのは、新千歳空港のラーメンが特別なのは味そのものだけではない、という点です。どこよりも「集まり方」が特別で、その集まり方こそが東京の空港との落差を生んでいます。ここでは道場の中身を具体的に見ていきます。

北海道ラーメン道場の地域別店舗分布図

空港3階「北海道ラーメン道場」とは何か

北海道ラーメン道場は、新千歳空港の国内線ターミナルビル3階にある、道内各地のラーメン店を集めた一角です。札幌をはじめ、旭川や函館、小樽、道東の弟子屈まで、名の通った店が10軒ほど一列に並んでいます。搭乗ゲートへ向かう前や、到着してすぐの時間に立ち寄れる場所にあります。

この一角が面白いのは、ただ人気店を寄せ集めたのではなく、北海道の地図を短い通路に畳み込んだような構成になっている点です。数十歩あるくだけで、味噌の札幌から醤油の旭川、塩の函館へと味の県境をまたいでいきます。空港という通過点に、北海道のラーメン文化のほぼ全域が縮図として置かれています。

だからここは、単なる腹ごしらえの場所という以上の意味を持ちます。旅の始まりに「これから向かう土地の味」を予習する場所にもなり、帰り際には「まだ食べていなかった地域の味」を回収する場所にもなります。まずはこの見取り図を頭に入れておくと、一杯の選び方が変わってきます。空港の公式情報は新千歳空港公式サイトでも確認できます。

北海道ラーメン道場は一過性のイベントではなく、空港に根づいた常設の一角です。だからこそ、旅程に組み込む前提で使えます。到着日の昼食をここに充てる、あるいは最終日の搭乗前に必ず一杯を挟む、といった計画が立てられます。空港のグルメというと、時間つぶしの受け身な選択に見えがちですが、道場は行き先を決めて向かう目的地になり得ます。

道場に並ぶ全10店の顔ぶれ

顔ぶれを一覧にすると、味の幅の広さがはっきりします。同じ北海道でも、スープの系統がこれだけ分かれている土地はそう多くありません。代表的なメニューと価格の目安を並べてみます。

店名 地域・系統 代表的な一杯
えびそば一幻 札幌・海老の濃厚 えびみそ(約1,100円〜)
旭川ラーメン 梅光軒 旭川・ダブルスープ醤油 醤油ラーメン
らーめん空 札幌・濃厚味噌 焼きとうきびラーメン(空港限定)
らーめん初代 小樽・熟成醤油 醤油ラーメン(約1,180円)
札幌飛燕 札幌・塩と鶏白湯 札幌塩ラーメン
麺処 白樺山荘 札幌・味噌 味噌ラーメン(ゆで卵無料)
けやき 札幌・濃厚味噌 味噌ラーメン(約1,300円)
函館麺厨房 あじさい 函館・塩 塩ラーメン、味彩加里
雪あかり 札幌・あっさり バターコーンラーメン
弟子屈ラーメン 道東・魚介醤油 魚介しぼり醤油ラーメン

札幌系が6店と厚く、そこに旭川、小樽、函館、道東が1店ずつ加わります。味噌に寄りすぎず、塩やあっさり、海老出汁まで一列に置いてあるので、好みが分かれる同行者と来ても、それぞれが違う地域の一杯を選べます。価格はおおむね1,100円台からで、空港限定や具だくさんの一杯は1,500円を超えることもあります。数字は2026年時点の目安で、変動する前提で見てください。

各店の最新のメニューや営業情報は、旅行情報サイトでもたびたび特集が組まれています。たとえばじゃらんニュースの新千歳空港ラーメンの特集では、一幻や白樺山荘などの一杯が写真つきで紹介されています。行く前にどの地域の味を選ぶか当たりをつけておくと、限られた空港での時間を無駄なく使えます。とくに初めて訪れる場合は、事前に2軒ほど候補を決めておくと迷いません。

札幌・旭川・函館が一本の通路に並ぶという不思議

あらためて考えると、これはかなり不思議な光景です。本州の感覚に置きかえるなら、博多とんこつと喜多方、和歌山の中華そばが、同じ空港の同じ通路に軒を連ねているようなものです。ふつう、ご当地ラーメンは現地まで行って初めて出会えるもので、地域をまたいだ食べ比べは、旅程を何日も組まないと難しいはずです。

それが新千歳空港では、移動ゼロで成立します。「東京にない」と言われる感覚の正体は、まずこの一点に宿っています。味の一つひとつではなく、地域を横断して食べ比べられる密度そのものが、他ではなかなか再現できません。北海道のラーメン店の層の厚さについては、街なかの例として札幌ラーメン横丁は本当にまずいのかを扱った記事もあわせて読むと、空港との違いが見えてきます。

この密度は、北海道という土地の広さと表裏一体です。函館から旭川、旭川から釧路は、それぞれ車で数時間の距離があり、道内をすべて回るだけでも相当な日数がかかります。現地を全部たどるのが難しいからこそ、空港が地域の味を代弁する場になっています。広い土地の縮図が一か所にあるという構図は、北海道ならではのものです。

ここまでの要点。新千歳空港のラーメンの特別さは、味の良し悪しよりも先に、道内各地の系統が一か所に畳み込まれている「密度」にあります。この密度が、後で述べる東京との落差の土台になります。

「東京にない」は個店ではなく地域横断の見本市を指す

東京の空港と新千歳空港のラーメン比較図

では、その落差を正確に言葉にしてみます。羽田や成田にも、ラーメン店はもちろん入っています。おいしい一杯にも出会えます。けれども、そこにあるのは「空港に入っている個々のラーメン店」であって、「ご当地ラーメンを地域ごとに並べ、横断して食べ比べさせる区画」ではありません

新千歳空港が持っているのは後者です。札幌の味噌の隣に旭川の醤油があり、その先に函館の塩があるという並べ方は、食べ比べを前提に設計されています。つまり「東京にない」の本体は、店の名前ではなく、この見本市という形式のほうにあります。個店を数えて「あの店なら東京にもある」と言っても、この落差は埋まりません。比べているものが違うからです。

私がこのサイトで大事にしている物差しのひとつが「落差」です。イメージと実態が何段ずれるかを測るという意味ですが、ここでの落差は、味の意外性ではなく構造の意外性にあります。空港という無味乾燥に思える通過点が、実は北海道でいちばん効率よくご当地ラーメンを回れる場所になっている、というねじれです。

見本市という言葉を使ったのには理由があります。見本市は、実物を並べて選ばせ、気に入ったら本場へ足を運ばせる場です。道場もまさにそう機能します。空港で函館の塩が気に入れば、次の旅では函館そのものへ行きたくなります。空港の一杯は、その土地への入り口であり、旅の予告編でもあります。だから食べ比べには、次の旅の計画を立てる楽しみまで含まれています。

えびそば一幻は東京にもある、という正直な話

ここで、煽らずに正直な話をしておきます。道場でいちばんの行列をつくるえびそば一幻は、東京にも店があります。東京駅の八重洲地下街や新宿、東京ソラマチなどで、あの濃厚な海老出汁を味わえます。ですから「一幻は北海道でしか食べられない」と書くのは、事実として正しくありません。

この点をあいまいにしたまま「空港のラーメンは全部東京にない」と言い切ると、期待と実態がずれて、読んだ人をがっかりさせてしまいます。それは、このサイトがいちばんやってはいけないと決めていることです。だから断定は避け、事実は事実として置きます。個店単位で見れば、東京で会える味も確かにあります。

そのうえで、それでも新千歳空港でしか得られないものは何かと問うと、やはり「地域を横断して一度に回れる密度」に戻ってきます。一幻の一杯は東京でも味わえても、一幻の隣で梅光軒の旭川醤油を食べ、その足で函館あじさいの塩へ向かう体験は、この空港でしか組み立てられません。落差は個店ではなく、道順のほうにあります。

正直に事実を置くことは、遠回りに見えて、結局いちばん役に立ちます。東京でも一幻が食べられると知っていれば、限られた空港での時間を、あえて東京では会いにくい旭川や道東の一杯に回す、という判断ができます。情報を正しく持つほど、旅の選択はむしろ自由になります。煽られて選ぶより、分かって選ぶほうが、一杯の満足は深くなります。

羽田・成田の空港グルメと何が違うのか

もう少し具体的に、東京の空港との違いを整理します。羽田や成田のグルメは、全国の話題店や上質な和食、寿司、洋食まで幅広くそろい、総合力ではむしろ北海道の空港を上回る面もあります。旅客数の規模を考えれば当然のことです。

ただし、その品ぞろえは「日本中・世界中のよりどりみどり」という方向に広がっています。一方で新千歳空港のラーメン道場は、北海道という一つの島の中を、地域ごとに深く掘る方向に特化しています。広く浅くではなく、狭く深くです。この設計思想の違いが、同じ空港ラーメンでも体験の質を分けます。

だから両者は優劣ではなく役割が違います。乗り継ぎの合間にとにかく間違いのない一杯を、というなら羽田も成田も強いです。けれど「北海道のラーメンを地域ごとに味わい分けたい」という目的に対しては、新千歳空港が持つ密度が効いてきます。目的が決まっているほど、この空港の価値は上がります。

もうひとつ違うのは、旅の物語との結びつきです。羽田や成田で食べる一杯は、旅の始まりや終わりの一場面ではありますが、味そのものは行き先とは無関係なことが多いです。新千歳空港の道場では、これから向かう土地、あるいは今回歩いた土地の味が皿の上にあります。食事が旅の記憶とまっすぐつながる点は、通過するだけの空港とは大きく異なります。

到着ロビーの真上、乗り継ぎでも寄れる近さ

物差しのもうひとつ、「近接」の話もしておきます。北海道ラーメン道場がある3階は、到着ロビーや出発ロビーからエスカレーターで数分の距離にあります。預けた荷物を受け取ってから、あるいは保安検査を受ける前のわずかな時間でも立ち寄れる近さです。わざわざ市街地まで出なくても、空港の建物の中で完結します。

この近さは、旅の設計に効いてきます。たとえば札幌へ向かう前に、到着してすぐ旭川や函館の味を先取りしておく、といった回り方ができます。逆に帰りの便では、市街で食べそびれた地域の一杯を、搭乗前の30分ほどで回収できます。移動の谷間にすっと差し込める立地は、それだけで大きな価値です。

そもそも新千歳空港そのものが、北海道でも指折りの規模を持つ大きな空港です。館内の充実ぶりは、街ひとつ分の機能に近いものがあります。空港の都会的な一面については、新千歳空港から都会を感じる記事でも触れています。その大きな建物の3階に、道内各地の味が凝縮されていると考えると、道場の贅沢さがより際立ちます。

◆とかいかんのワンポイント

道場は乗り継ぎや待ち時間の「谷間」にこそ向く場所です。到着後すぐ、または搭乗前の30分を見つけたら、市街の名店を探す前に、まずここで一杯を試す価値があります。空港から街へ出る前の予習として使うと、旅全体の満足度が上がります。

一杯の価格と滞在時間の目安

実用的な数字も置いておきます。一杯の価格はおおむね1,100円から1,600円ほどで、空港という立地を考えれば、街の名店とそれほど大きくは変わりません。トッピングを盛った一杯や空港限定メニューは、これより高くなることがあります。いずれも2026年時点の目安で、価格は改定されることを前提に見てください。

滞在時間は、席に着いてから食べ終わるまでで20分から30分ほどを見ておくと安心です。ここに、混雑した時間帯なら待ち時間が上乗せされます。搭乗時刻から逆算して、最低でも1時間、余裕を持つなら1時間半を空けておくと、慌てずに一杯を楽しめます。空港内の移動時間や保安検査の混み具合も、少し多めに見積もっておくと安全です。

荷物の扱いにも触れておきます。大きなスーツケースを持ったまま人気店に並ぶのは、自分にとっても周りにとっても負担になります。搭乗前に食べるなら、先に荷物を預けてから道場へ向かうと身軽です。到着後に食べるなら、受け取った荷物を一時的にロッカーへ預ける手もあります。ひと手間かけるだけで、一杯に向き合う気持ちの余裕が変わります。

ここまでが、新千歳空港のラーメンが「東京にない」と言われる正体です。落差は味ではなく密度と道順にありました。次の章では、そもそもなぜ北海道のラーメンが地域ごとに分かれたのか、その歴史のほうへ踏み込みます。

北海道のラーメンが地域で分かれた歴史と空港での選び方

見本市が成り立つのは、そもそも並べるだけの「地域差」が北海道に存在するからです。ではなぜ、同じ道内で味噌と醤油と塩に分かれたのか。ここを種明かしすると、道場の一杯の選び方も自然に見えてきます。

北海道三大ラーメンの由来マップ

函館の塩ラーメンは開港地と華僑がルーツ

まず函館の塩です。函館は、日本のなかでも早くに港を開いた土地でした。その歴史が、そのままスープに残っています。農林水産省の資料でも、函館のラーメンは、開港地に来た華僑が伝えた広東系の清湯、いわゆる湯麺の流れをくむとされています。鶏や豚の骨からとった澄んだスープに、塩で味を決めるあっさりした一杯です。

明治17年に函館で出された「南京そば」を日本初のラーメンとみる説もあり、詳しい資料は残っていないものの、港町の国際性が早くから麺文化を根づかせたことがうかがえます。函館の塩は、北の港が世界とつながっていた証拠のような一杯です。詳しくは農林水産省「うちの郷土料理」にも由来がまとめられています。

道場の函館麺厨房あじさいで塩ラーメンを口にするとき、その澄んだスープの向こうに、開港地・函館の歴史が透けて見えます。味そのものよりも、なぜこの味になったのかを知って飲むと、一杯の解像度が上がります。これが、このサイトのいう「種明かし」です。

塩ラーメンは、味付けが単純に見えるぶん、素材とだしの質が正直に出る一杯でもあります。ごまかしのききにくい塩で長く勝負してきたことに、函館という港町が積み上げてきた技の厚みを感じます。あっさりしているからと軽く見ると、その奥行きに驚かされます。旅の締めに選ぶ人が多いのも、うなずける味わいです。

旭川の醤油ラーメンは寒さが生んだ工夫

次に旭川の醤油です。旭川は内陸にあり、冬の冷え込みが厳しい土地です。その気候が、独特の一杯を生みました。旭川ラーメンの特徴は、豚骨や鶏ガラといった動物系のだしに、煮干しや昆布などの魚介系を合わせたダブルスープの醤油味です。二つのだしを掛け合わせることで、複雑な旨みを出しています。

さらに注目したいのが、スープの表面に張られたラードの薄い膜です。これは飾りではなく、寒い旭川でも熱が逃げにくいようにするための実用的な工夫とされています。麺は加水率の低い中細の縮れ麺が主流で、スープをよくからめます。つまり旭川の一杯は、寒さと戦うための設計思想が味の形になったものです。

道場の梅光軒で醤油ラーメンをすするとき、その表面のつやや熱の持ちのよさは、旭川の冬そのものです。北海道の内陸がどれだけ冷えるかを、味を通して体感できます。土地の厳しさが、そのままごちそうの理由になっている好例です。

ラードの膜という工夫は、他の寒い土地の麺料理にも通じる普遍性を持っています。熱を逃がさないという一点を突き詰めた結果、旭川の醤油は独自の位置を築きました。気候という動かせない条件を、恨むのではなく味の個性へと転じたところに、北の暮らしのしたたかさがにじみます。厳しさを引き算ではなく足し算に変える発想です。

札幌の味噌ラーメンは1955年生まれの新顔

三つめは、いちばん有名な札幌の味噌です。北海道ラーメンの代表格ですが、実は歴史はそれほど古くありません。札幌の味噌ラーメンは、1955年に札幌の店「味の三平」の店主が、味噌汁をヒントに作ったのが始まりとされています。三大ラーメンのなかでは、いわば新顔です。

味噌のコクを受け止めるために、スープは濃く、麺は中太が合わせられました。そして、この味噌ラーメンによく乗るバターやコーンには、はっきりした理由があります。寒い札幌の気候に合わせて、カロリーを補うために加えられたものだとされています。見た目のにぎやかさは、北国の暮らしの知恵から来ています。

道場には、けやきや白樺山荘、らーめん空など、味噌を看板にする店が複数あります。同じ味噌でも、味噌のブレンドや炒め方で表情が変わるので、味噌だけで飲み比べても十分に楽しめます。札幌系が6店と厚いのは、それだけ味噌の裾野が広いことの表れです。

歴史が新しいということは、裏を返せば、今も進化を続けているということでもあります。札幌の味噌は、店ごとに味噌の配合や炒め方を競い合い、絶えず更新されてきました。道場に味噌の店が複数あるのは、その競争の縮図です。定番でありながら、いちばん動きの激しいジャンルが札幌味噌だと私は見ています。だからこそ、飲み比べる価値があります。

三大以外にも道東や小樽の系統がそろう

北海道のラーメンは、三大ラーメンだけではありません。道場には、その外側の系統もきちんと入っています。道東の弟子屈ラーメンは、魚介をきかせたしぼり醤油が持ち味で、地産地消を大切にした一杯です。釧路に近いあっさり醤油の流れをくむ味で、こってりに疲れた口によくなじみます。

小樽のらーめん初代は、約1か月も熟成させた醤油ダレを使う店で、道場のなかでは比較的新しく、2025年12月に開いたばかりです。港町・小樽の醤油は、函館とも旭川とも違う個性を持ちます。こうして並べると、北海道のラーメンが三つでは語りきれない多層構造であることがよく分かります。

函館麺厨房あじさいには、塩だけでなく、味彩加里というカレー味のメニューもあります。北海道にはカレーラーメンやスープカレーの文化もあり、道場はその入り口までさりげなく押さえています。三大に道東と小樽、そして変わり種まで、まさに縮図です。

こうした多層構造は、北海道の広さと歴史の複雑さの反映でもあります。開拓の時期や、入ってきた人々の出身地、港とのつながりが、地域ごとに違う味を育てました。ひとつの島の中にこれだけの系統がそろう土地は、全国を見渡してもそう多くありません。道場を端から端まで歩くことは、その多様さを短い距離で一度に味わうことにほかなりません。

◆とかいかんのワンポイント

迷ったら、自分が今回の旅で行かない地域の一杯を選ぶのがおすすめです。札幌へ向かうなら旭川や函館を、道南へ向かうなら道東を。行き先で食べる味と重ならないよう選ぶと、旅全体でより多くの地域の味に出会えます。

行列を避ける時間帯と各店の営業時間

空港ラーメンの混雑時間帯の早見表

ここからは、実際に道場を使うときのコツです。人気店は昼どきに長い列ができます。とくにえびそば一幻は道場でもっとも行列ができる店で、開店の30分後くらいまでは待ちがほとんどないものの、11時を過ぎると一気に列が伸びる傾向があります。混雑を避けたいなら、朝いちか、昼と夜の谷間の時間がねらい目です。

営業時間にも店ごとの差があります。多くの店はラストオーダーが20時30分ごろですが、らーめん空は20時で他店より早く閉まります。夜の便を待つ間に一杯、と考えているなら、狙う店の閉店時刻を先に確かめておくと確実です。せっかく並んだのに時間切れ、という事態を避けられます。

混雑のピークと自分の搭乗時刻が重なりそうなときは、無理に人気店をねらわず、隣の席が空いている店に切り替える柔軟さも大切です。道場の魅力は、そもそも選択肢が10軒あることです。一軒にこだわらず、そのとき座れる店で北海道の一杯を味わうほうが、旅の時間を有効に使えます。

待ち時間を旅の一部として楽しむ考え方もあります。ただ、搭乗時刻という動かせない締め切りがある以上、余裕のない賭けはおすすめできません。列の長さと自分の残り時間を冷静に見比べて、厳しいと感じたら潔く別の店へ切り替える。この割り切りができるかどうかで、空港での食べ歩きの快適さは大きく変わります。

初北海道・締めの一杯・子連れ、目的別の選び方

目的別に、選び方の指針も置いておきます。初めての北海道で、まず王道を押さえたいなら、札幌の味噌が無難です。けやきや白樺山荘で、濃いスープにバターやコーンの乗った一杯を試すと、北海道ラーメンの原点を体で覚えられます。旅の入り口にふさわしい一杯です。

旅の締めに、こってりに疲れた口を整えたいなら、函館あじさいの塩か、弟子屈の魚介醤油が向きます。あっさりした系統は、脂の多い食事が続いた旅の最後をやさしく締めくくってくれます。逆に、旅の高揚をもう一段上げたいなら、えびそば一幻の濃厚な海老出汁が記憶に残ります。

小さな子ども連れなら、席数の多い店や、待ち時間の短い時間帯を選ぶと安心です。白樺山荘は50席と道場のなかでも席が多めで、比較的入りやすい店です。空港のお土産と組み合わせたい場合は、新千歳空港のお土産を郵送する方法の記事も参考になります。

まとめ 新千歳空港ラーメンが東京にない理由

最後に、この記事の答えをまとめます。新千歳空港ラーメンが東京にないと言われる理由は、個々の店が東京に存在しないからではありません。えびそば一幻のように東京にも店を構えるブランドはあります。本当の落差は、札幌の味噌から旭川の醤油、函館の塩、道東や小樽の系統までを、地域を横断して一か所で食べ比べられる密度と道順にあります。

そしてその密度が成り立つのは、北海道のラーメンが、開港地の歴史や内陸の寒さ、戦後の暮らしといった土地の理由から、地域ごとに違う味へと分かれてきたからです。空港3階の通路は、その多層構造をまるごと畳み込んだ縮図になっています。味の背景を知って飲むと、一杯の解像度は確実に上がります。

新千歳空港へ降り立ったら、あるいは飛び立つ前に、ぜひこの見本市を歩いてみてください。北海道という土地が、なぜこれほど豊かなラーメン文化を持つに至ったのか、その答えの多くが、3階の短い通路に静かに並んでいます。東京にないのは店ではなく、この密度そのものです

新千歳空港ラーメンのよくある質問

最後に、新千歳空港のラーメンについて、旅の前によく聞かれる疑問をまとめておきます。

Q1. 北海道ラーメン道場は保安検査の前と後、どちらにありますか?

A. 北海道ラーメン道場は国内線ターミナルビル3階の、保安検査を受ける前のエリアにあります。搭乗前でも、到着してからでも立ち寄れる場所です。搭乗ゲートを通過した後の制限エリア内ではないので、時間に余裕を持って向かうと安心です。

Q2. 新千歳空港のラーメンは東京では本当に食べられないのですか?

A. 店によって異なります。えびそば一幻のように、東京の八重洲地下街や新宿などに店を構えるブランドもあり、その味は東京でも楽しめます。新千歳空港ならではの価値は、道内各地のご当地ラーメンを地域を横断して一度に食べ比べられる密度のほうにあります。

Q3. 混雑を避けるにはいつ行くのがよいですか?

A. 開店直後の午前中か、昼と夜の谷間にあたる15時から17時ごろが比較的落ち着いています。11時から13時の昼どきは、人気店を中心に列が伸びやすい時間です。ラストオーダーは20時30分ごろが基本で、店によっては20時に閉まるところもあるため、夜は早めの行動が安全です。

Q4. 一杯の値段と、どのくらい時間を見ておけばよいですか?

A. 価格はおおむね1,100円から1,600円ほどが目安で、限定メニューや具だくさんの一杯はこれより高くなることがあります。いずれも2026年時点の目安です。時間は、食べるだけで20分から30分、混雑時の待ち時間も見込むと、搭乗時刻から1時間から1時間半ほど空けておくと慌てずに済みます。

Q5. 三大ラーメン以外の味も空港で楽しめますか?

A. 楽しめます。道場には、道東の弟子屈ラーメンの魚介しぼり醤油や、小樽で約1か月熟成させた醤油ダレを使うらーめん初代などもそろっています。函館麺厨房あじさいには、塩だけでなくカレー味の味彩加里もあり、三大ラーメンの枠に収まらない北海道の多彩な味に触れられます。

旅先で買えなかったものはありませんか

北海道の名産を、あとから取り寄せられるものだけまとめています。現地で買えるならそのほうが安いことも書いています。

名産の取り寄せを見る