こんにちは、駅ナカ駅マエ北海道のとかいかんです。

札幌の中心を流れる豊平川では、毎年秋になるとサケが海から戻ってきます。大都市のど真ん中でサケが自然に産卵する川は世界でもめずらしい存在です。

そんな豊平川を前にして「実際に何匹くらい戻ってくるのか」「去年より増えたのか減ったのか」と気になっている人は多いはずです。

でも年ごとの遡上数や産卵床の調査結果をまとめて見られる場所は意外と少ないです。そこでこの記事では札幌市豊平川さけ科学館などが公開している調査データをもとに、豊平川のサケの数と推移をわかりやすくまとめました。

この記事を読むと最新の数字だけでなく数が増えたり減ったりする理由まで見えてきます。最後まで読めば、ニュースで遡上数の話題を見かけたときに自分なりに意味を読み取れるようになります。

  • 豊平川に戻るサケの最新の遡上数と規模の目安
  • 2023年から2025年までの遡上数と産卵床の推移
  • カムバックサーモン運動から現在までの歩み
  • 調査データを正しく読むための見方

結論から言うと、豊平川に戻るサケの数は年によって大きく変わります。

近年の推定遡上数はおよそ数百尾から2000尾ほどです。2025年度は約226尾で過去最低の水準でした。多い年と少ない年の差は海での生き残りなど川の外の要因に大きく左右されます。

だから単年の多い少ないだけで判断するのは適切ではありません。産卵床の数や放流数と合わせて長い目で推移を追うと、札幌のような大都市で自然のサケを守る難しさと価値が見えてきます。

豊平川のサケは今どのくらいいるのか

豊平川のサケは今どのくらいいるのかの要点

まずは多くの人が気になる今の数から見ていきます。最新の調査結果と、その数の調べ方をあわせて説明します。

最新の調査でわかった遡上の規模

札幌市豊平川さけ科学館の調査では2025年度の推定遡上数が226尾でした。これは例年のおよそ5分の1にあたり、記録のなかでも過去最低の水準です。

ひとつ前の2024年度は914尾でした。その前の2023年度は約1,944尾です。こうして並べてみると、わずか2年で数が大きく減ったとわかります。

ここでは、この数字がどのくらいの規模なのかを見ていきます。豊平川の推定遡上数は落ち込んだ年を除けばおおむね1000尾から2000尾ほどで動いてきました。札幌のような大都市の川に毎年千尾前後の天然のサケが戻るのは全国的に見てもめずらしいことです。

今の豊平川のサケの規模

落ち込んだ年を除けば、推定遡上数はおおむね1000尾から2000尾です。2025年度は約226尾で過去最低でした。数字は年ごとの振れ幅が大きいと覚えておいてください。

サケの数をどうやって数えているのか

「226尾」や「1,944尾」は川で1匹ずつ数えた数字ではありません。さけ科学館ではサケが産卵のために川底を掘ってつくる産卵床の数を調べ、そこから遡上したおおよその数を推定しています。

調査は秋から冬にかけて行われます。2025年度は9月24日から2026年1月7日までの間に、合わせて8回の調査が実施されました。川沿いを歩いて産卵床の場所と数を記録し、産んだあとに力尽きた親魚も数えていきます。

産卵床(さんらんしょう)とは

メスのサケが川底の砂利を掘って卵を産みつけた場所です。掘り返された砂利は周りより明るく見えるため、上から探すと見つけられます。産卵を終えて死んだサケは「ホッチャレ」と呼ばれ、この数も遡上数を知る手がかりになります。

つまり公表される遡上数は、あくまで調査にもとづく推定値です。天候が悪くて調査しづらい年もあるため、数字には多少の幅があると考えておくのがよいです。

サケが遡上する時期と見られる場所

豊平川のサケは9月の下旬ごろから川に姿を現しはじめます。最盛期は10月から11月にかけてで、年によっては12月に入っても産卵が続きます。

観察のねらい目は、川の水が澄んで日差しのある日中です。札幌市中心部に近い区間でも遡上が見られるため思い立った日に出かけられる手軽さがあります。くわしい観察スポットについては別の記事でまとめています。

どの橋からよく見えるのかを地図つきで知りたい人は、豊平川でサケが見える場所とおすすめの橋・観察時期の案内もあわせて読んでみてください。

遡上数と産卵床データの年ごとの推移

遡上数と産卵床データの年ごとの推移の要点

ここからがこの記事の中心になります。さけ科学館が公表した3年分の結果を表にまとめたので、まずは数字の動きをつかんでください。

2023年から2025年の調査結果の比較

下の表は豊平川と真駒内川を合わせた調査結果です。産卵床の数と推定遡上数が、年を追うごとに減っているのがわかります。

調査年度 推定遡上数 産卵床の数 野生魚の割合 調査期間
2023年度 約1,944尾 972か所 77% 2023年9月〜2024年1月
2024年度 約914尾 457か所 50% 2024年9月〜2025年1月
2025年度 約226尾 113か所 86% 2025年9月〜2026年1月

(出典:札幌市豊平川さけ科学館「2025年度豊平川・真駒内川 サケ・サクラマス産卵床調査結果」ほか各年度の調査結果)

数字を見ると、推定遡上数は2023年度の約1,944尾から2年で約226尾まで落ち込みました。産卵床の数も972か所から113か所へ大きく減っています。いっぽうで野生魚の割合は、2024年度の50%から2025年度は86%へと高まりました。

ここで挙げた数字は、川でサケを直接数えたものではなく産卵床から割り出した推定値です。あくまで目安として見てください。調査のしかたや天候によって年ごとに誤差が出ることもあります。

2025年度が過去最低になった理由

2025年度の226尾はこれまでの記録でいちばん少ない数でした。例年の5分の1ほどの大きな落ち込みです。これほど減った背景には、川の中ではなく海での出来事が関わっていると考えられています。

サケは川で生まれたあと海へ下り、数年かけて育ってから生まれた川へ戻ってきます。この海で過ごす間に水温などの環境が悪いと生きて戻れる数が大きく減ります。2024年度から2025年度の落ち込みでは、同じ石狩川水系の千歳川でもサケが少なくなりました。ここから広い範囲で海の状況が影響したとみられています。

同じようにサケが戻る千歳川のことは、千歳市の観光とサケのまとめでも紹介しています。

数が年ごとに大きく動く背景

ここまでの話からわかるとおり豊平川のサケの数は川の中の努力だけで決まるものではありません。

放流や産卵環境の改善といった地道な取り組みは、戻ってくるサケの土台をつくります。けれども最後にその年の数を左右するのは海でどれだけ生き残れたかです。

だから1年だけの数字を見て「増えた」「減った」と一喜一憂しても、本当の傾向はつかめません。大事なのは5年から10年ほどの長い目で推移を追うことです。長く見れば、落ち込んだ年のあとに数が戻るかどうかも見えてきます。

◆とかいかんのひとことメモ

私がこの数字を追っていて強く感じるのは、豊平川のサケが札幌の自然のものさしに見えることです。数が減った年は海の変化を映し増えた年は川の環境が守られている証しになります。一喜一憂せずに長い目で見守る姿勢が、都市の川とサケの関係を考えるうえで欠かせません。

豊平川にサケが戻るまでの歩み

豊平川にサケが戻るまでの歩みの要点

いまでは当たり前に見える豊平川のサケにも長い道のりがありました。歴史を知ると、毎年の遡上数の重みが変わって見えてきます。

都市化で一度は消えたサケ

かつての豊平川にはたくさんのサケが戻る豊かな時代がありました。ところが札幌の街が大きくなるにつれて川の水は汚れていきます。生活排水や工場排水が流れ込み、昭和の中ごろにはサケの姿がほとんど見られなくなりました。

川を見ても魚は戻ってきませんでした。そんな時代が長く続きました。サケがいない豊平川は、札幌の人にとって当たり前の風景だったのです。

カムバックサーモン運動とさけ科学館

流れが変わったのは1970年代の後半です。「札幌にサケを呼び戻そう」と願う市民運動が広がり、これがカムバックサーモン運動と呼ばれました。

1978年ごろから市民の手で稚魚の放流が始まりました。下水道の整備が進んで川の水がきれいになったことも後押しとなり、やがて豊平川にサケの遡上がよみがえります。この運動の拠点として、1984年には札幌市豊平川さけ科学館が開館しました。

この歩みは豊平川のサケがなぜ都会で見られるのかを解説した記事でもくわしく取り上げています。都市の川にサケが戻った背景を知りたい人は、あわせて目を通してみてください。

放流中心から野生のサケを増やす段階へ

放流中心から野生のサケを増やす段階への要点

豊平川の取り組みはいま新しい段階に入っています。数を増やすだけでなく自然に産卵して育つ野生のサケを増やす方向へ進んでいます。

札幌ワイルドサーモンプロジェクトの狙い

2014年に立ち上がったのが札幌ワイルドサーモンプロジェクトです。これは放流に頼りきるのではなく、豊平川の中で自然に生まれて育つサケを増やそうとする取り組みです。

放流は数を手早く増やせる一方で、人の手を借りないと続かないもろさを抱えています。川の中だけで命がめぐる野生のサケが増えれば豊平川のサケはもっと自然な形で受け継がれていきます。だからこのプロジェクトでは、放流の数をあえて見直す試みを進めてきました。

順応的管理による放流数の調整

野生のサケを増やすため2016年からは順応的管理と呼ばれる進め方が取り入れられました。

やり方はこうです。遡上数の平均が1000尾を下回ったら放流する稚魚の数を減らし、1000尾まで回復したら元に戻します。放流を減らせば、その分だけ川で自然に生まれたサケの割合を見きわめやすくなります。

減らした放流分の影響が戻ってくるのは数年後です。実際に2019年ごろからは、放流を減らした影響を受けたサケが戻りはじめたとされています。放流に頼る川から自分の力で命をつなぐ川へと少しずつ形を変えている最中です。

さらに土砂でふさがれた産卵場所を掘り起こすなど、サケが卵を産みやすい川を取り戻す工事も続けられてきました。こうした取り組みの内容は、国土交通省北海道開発局 札幌河川事務所「豊平川におけるサケ産卵環境改善の取り組み」にくわしくまとめられています。

野生魚の割合が教えてくれること

調査では戻ってきたサケが野生魚なのか放流魚なのかも調べています。2025年度は野生魚の割合が86%まで高まりました。数そのものは過去最低でしたが、戻ったサケの多くが川で自然に生まれた魚だったことになります。

いっぽうで2024年度は、野生魚と放流魚がちょうど半分ずつでした。近年は7割から8割ほどが野生魚だった年が多く年によって割合も動きます。放流を減らしながら野生魚を増やす試みが、数字のうえにもあらわれはじめています。

◆とかいかんのひとことメモ

遡上数が減った年ほど、野生魚の割合に注目してほしいと私は思っています。数が少なくても野生魚の比率が保たれていれば川の力そのものは衰えていないと見られます。数字はひとつだけでなく組み合わせて読むと、本当の姿が見えてきます。

調査データを正しく読むために

最後にここまでのデータをどう受け止めればよいのかをまとめます。数字に振り回されないための見方をお伝えします。

単年の増減だけで判断しないこと

いちばん大事なのは1年だけの数字で良し悪しを決めつけないことです。2025年度の226尾だけを見れば、豊平川のサケは危機的に思えます。けれども海の状況など川の外の要因が大きいため来年に数が戻る見込みも十分にあります。

過去にも数を減らした年はありました。そのたびに取り組みが続けられ、数が戻ってきた歴史があります。だからこそ単年ではなく、何年も続けて見ることに意味があります。

最新の数字を自分で確かめる方法

遡上数や産卵床の調査結果は毎年さけ科学館が公表しています。最新の数字を知りたいときはさけ科学館の「調査情報」のページを見るのが確実です。だいたい翌年の春までに、その年度の結果がまとめて公開されます。

さけ科学館は入館が無料で、サケの一生を実物で学べる場所です。遡上の時期に合わせて出かければ川のサケと展示の両方を楽しめます。施設のくわしい見どころは、豊平川さけ科学館の展示内容と見どころの案内にまとめています。

豊平川のサケに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 豊平川のサケは今どのくらいいますか?

A. 2025年度の推定遡上数は約226尾で過去最低でした。ただし落ち込んだ年を除けば、近年はおおむね1000尾から2000尾ほどで動いています。年ごとの差が大きいため最新の数字はさけ科学館の発表で確かめるのが確実です。

Q2. サケの数はどうやって数えているのですか?

A. 川でサケを1匹ずつ数えているわけではありません。さけ科学館がサケの産卵床の数を調べ、そこから遡上したおおよその数を推定しています。公表される遡上数はあくまで推定値です。

Q3. なぜ2025年度のサケは少なかったのですか?

A. はっきりした原因は確定していません。ただ同じ水系の千歳川でもサケが少なかったため、海で過ごす間の環境が影響したとみられています。川の中だけでは説明できない要因が大きいです。

Q4. 豊平川のサケはいつ見られますか?

A. おもに9月下旬から11月ごろにかけて見られます。札幌市の中心部に近い区間でも遡上するため気軽に観察できます。水が澄んで日差しのある日中がねらい目です。

Q5. 放流をやめても豊平川のサケは増えますか?

A. いますぐ放流をやめるわけではありません。札幌では放流の数を調整しながら、川で自然に生まれる野生のサケを増やす取り組みが進んでいます。2025年度は戻ったサケの86%が野生魚でした。

まとめ

豊平川のサケについて、ここまで見てきた内容をまとめます。

  • 2025年度の推定遡上数は約226尾で過去最低の水準だった
  • 近年はおおむね1000尾から2000尾ほどで年ごとの変動が大きい
  • 数は産卵床の調査から推定され公表値はあくまで目安である
  • 数を大きく左右するのは海での生き残りなど川の外の要因である
  • 放流中心から野生のサケを増やす段階へ取り組みが進んでいる
  • 最新の数字はさけ科学館の調査情報で確かめられる

豊平川のサケの数は、1年ごとに大きく揺れ動きます。だからこそ単年の多い少ないで一喜一憂せず長い目で推移を追うのが大切です。数字の裏側にある海や川の物語まで想像できると、秋の豊平川がもっと豊かに見えてきます。あなたも次の秋には、数字を思い浮かべながらサケに会いに行ってみてください。