札幌都市圏における鉄道駅の設置と都市化の進展

通勤通学や行楽などで利用する人も多い札幌圏のJR線。多くの駅がありますが、これらの駅は都市化の進展とともに増加していきました。今回は駅の設置と都市化の関係を見ていきたいと思います(文中では国鉄以前の時代も含め現在のJRの路線はJR線と表記します)。

最も開業が早かった函館本線
今とルートが違う千歳線
現在の様子とはまるで違う札沼線
３路線通じて大きく駅が増えた年が…
参考

最も開業が早かった函館本線

札幌近郊に最初の鉄道が開業したのは1880年のことでした。現在の函館本線で、まず手宮～札幌間が開業、1882年には岩見沢まで延伸しますが、現存する駅でこの時までに開設された駅は、南小樽、朝里、銭函、手稲、琴似、札幌、江別、幌向、岩見沢の９駅だけでした。開業当初は概ね一つの自治体に１駅ずつ設置されていました。

この時代と現在とでは自治体の区分が違うため単純比較はできませんが、19世紀末の人口は小樽が約６万人、札幌が約４万人、手稲町や琴似町の人口は約３～４千人でした。

それ以降1900年までに厚別駅と野幌駅が開設されますが、小樽や小樽築港、桑園、苗穂、白石、上幌向といった駅は1900年代前半に、それ以外の駅の開設は戦後まで待たねばなりませんでした。

今とルートが違う千歳線

千歳線は1926年に開通しますが、現在とは異なるルートを走っていました。開通当時から現存する駅は北広島、島松、恵庭、千歳、植苗の各駅で、現在の列車の運行体系に照らすと、これらに加えすでに開業していた沼ノ端と苫小牧の両駅がありました。千歳線では函館本線とは異なり、恵庭村と千歳村では開通当初から複数の駅が設けられた一方、戦後まで現存する駅の開設はありませんでした。

開通直前にあたる1925年の沿線人口は北広島が約４千人、恵庭が約７千人、千歳が約５千人と、時代が下ったこともあり、函館本線開業時の沿線人口よりも多いことがわかります。

現在の様子とはまるで違う札沼線

1934年には札沼線が開業します。開業当時の駅は新琴似、篠路、太美と当別の４駅のみでした。沿線自治体の人口は篠路村が約３千人、当別村は約１万人でした。篠路村の人口は少ないように見えますが、札幌市に編入される1954年まで増加が続きます。

３路線通じて大きく駅が増えた年が…

戦後～1960年代までに開設された駅は函館本線の豊幌、大麻、千歳線の長都、札沼線のあいの里公園と拓北の５駅のみでしたが、1973年には千歳線の北広島～白石間が現在のルートへ切り替えられ、上野幌(現駅)、新札幌の両駅が開設されます。戦後、札幌を中心とした都市部の人口が急増する中で駅の数が思いの外増えていないことは少し意外かもしれません。

しかし、1980年代に入ると様相が変わります。1980年代半ばまでに千歳線の恵み野、函館本線の森林公園と星置の各駅が誕生すると、それらを皮切りにJR誕生直前の1986年、函館本線の稲穂、稲積公園、発寒、発寒中央、高砂、千歳線の平和、札沼線の新川、太平、百合が原、あいの里教育大の各駅が一気に新設され、1988年には札沼線の八軒駅も開設されました。

当時札幌市全体の人口は約160万人。毎年数万人ずつの増加がありましたが、その中でもこれらの駅の多くが立地する現在の北区・手稲区・西区ではベッドタウンとして大きく開発が進みました。特に札沼線沿線の北区は著しい人口の増加をみせており、現在でも10区の中で最多の人口を誇っていますし、同じく駅が複数新設された西区では手稲区を、白石区は厚別区をそれぞれ分区しており、駅が新しく設置された地域では人口が急増していたことがわかります。この時代の駅の誕生は、札幌市郊外の宅地化の進展とJR誕生を前にした旅客サービスの向上がもたらしたといえるでしょう。

その後1995年には函館本線のほしみ駅が、そして2022年に札沼線のロイズタウン駅が開設され現在の形となっています。

開業当初、数少なかった駅が、人口増加に伴うベッドタウンの開発と国鉄民営化による旅客サービスの向上によって増加したことが分かりました。